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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《智恵の一太郎(ちえのいちたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 頁

青空文庫

「どうだい。音が二つになってきこえただろう」

大急ぎで一太郎君のそばへかけもどって来た伯父さんは、息をきらしながらたずねるのでした。

「ええ、大きい音と小さい音と、重なりあうようにしてきこえました。でも、伯父さんは、一度ずつしかたたかなかったんですねえ」

「うん、そうだよ。たたいたのは一度ずつだが、音は二度ずつきこえたんだよ。さあ、考えてごらん。これはいったいどういうわけだろうね」

一太郎君は、こういうふしぎな謎をとくことが、何よりも好きでした。うれしいような恐しいような気持がして、顔が赤くなり、胸がどきどきしてくるのです。

「さっき、ちょっと話しかけたことだから、ようく考えてみればわかるのだよ」

伯父さんが力づけて下さる声をききながら、一太郎君は一生けんめいに考えました。すると、やがて、心の底からある考がすーっとうき上って来たではありませんか。

「わかりました。空気と鉄とでは、音の伝わる早さがちがうからです。はじめのカーンという音は、つけている耳に強くひびきましたから、あれはレールの鉄を伝わって来た音です。それからあとの小さい音は、空気を伝わって来た音です。