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あらしのなか

暴風雨の中

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《暴風雨の中(あらしのなか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,339 字 · 30 頁

青空文庫

「おしげとは古い馴染だ」三之助の声はやはり低かった、「こっちは川筋のやくざな船頭、向うは大きな船宿の娘だった、おれがこんな人間だということはよく知っていて、知っていながらおれにじつを尽してくれた、口では云えねえ、また云いようもねえほどの、じつを尽してくれた、おかみさんにしてくれと云われたこともある、だがおらあ、……おらあいつもそっぽを向いてた、涙の出るほど有難えと思うときでも、おらあ薄情にそっぽを向いてた」

「もっと相手をのぼせさせるためにか」

「誰より好きだったからだ」三之助は静かに首を振った、「ほかの女とは違うんだ、まるで違うんだ、この娘に手を出しちゃあならねえ、おらあいつも自分にそう云ってた、どんなことがあっても触れるなってよ、……そうなんだ、おらあ身も世もねえほどおしげが好きだったから、おしげには手出しをしなかったんだ」

廊下へざっと波がかぶって来た。強くなった流れのために、家はぐらぐらと絶えず揺れ、家の周囲や階下の方で、水の揉みあう音が高く、ぶきみに聞えだした。

「そうなんだ」と三之助は云った、「あの女たちはどこかしらおしげに似ていた、性分はそれぞれ違っているが、みんなどこかしらおしげに似たようなところがあった、けれどもそうじゃあなかった、いっしょになって暫くすると、そうでねえことがわかった、おたい