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しょをあいしてしょをもたず

書を愛して書を持たず

小川 未明

線上閱讀小川 未明《書を愛して書を持たず(しょをあいしてしょをもたず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,379 字 · 7 頁

青空文庫

一方、人生の精神文化は、遅々として向上せず、大衆の趣味、理想は、依然として低くあるかぎり、たま/\良書が出版されても、その再版、三版は期し難いのであります。何人も知るごとく、必ずしもよく売れる本がいゝとはいわれない。大衆性を有するものだけが、いつの時代でもよく売れるということは明かであります。

これに較べると、昔の和本は、生紙を使用して木版で摺られている。そして、糸で綴られていて、一見不器用だけれど、手工業時代の産物としての趣味があり、一種の芸術味が存している。中には※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)絵などが入っていて、一層の情趣を添えるのもあって、まことに書物として玩賞に値するのであります。

和本は、虫がつき易いからというけれど、この頃の洋書風のものでも、十年も書架に晒らせば、紙の色が変り、装釘の色も褪せて、しかも和本に於けるように雅致の生ずることもなく、その見すぼらしさはないのであります。

これから見ても、和本は、出版の部数は少なかったけれど、これを求めた人は愛玩し、また、古本となって、露店へ出ても、買った人は大事にして、本箱に樟脳をいれたりして、永久に保存したでありましょう。