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つきとてぶくろ
月と手袋
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《月と手袋(つきとてぶくろ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,541 字 · 80 頁
「待っていたよ。さあ、あがりたまえ」
二階の書斎にはムンムンするほどストーヴが燃えていた。天井を煙突の這っている石炭ストーヴだ。寒がり屋の股野は、これでなくては冬がすごせないと云っていた。
一方の壁にはめこみの小金庫がある。イギリスものらしい古風な飾り棚がある。一方のすみに畳一畳もある事務机、まん中には客用の丸テーブル、ソファー、アームチェア、いずれも由緒ありげな時代ものだが、これらは皆、元金ではなくて利息の代りに取り上げた家具類である。
克彦が入口の長椅子にオーバーをおいて、椅子にかけると、股野は飾り棚からウィスキーの瓶とグラスを出して、丸テーブルの上においた。高利貸しらしくもないジョニー・ウォーカーの黒である。これもむろん利息代りにせしめたものであろう。
股野は二つのグラスにそれをつぎ、克彦が一と口やるうちに、彼はグイとあおって、二杯目をついだ。
「直接法で行こう。わかっているだろうね、今日の用件は?」
股野はいつもの通り、太い鼈甲縁の目がねをかけ、黒のズボンに茶色のジャンパーを着て、詩人めいた長髪に紺のベレ帽をかむっていた。室内でも脱がない習慣である。