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つきとてぶくろ

月と手袋

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《月と手袋(つきとてぶくろ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,541 字 · 80 頁

青空文庫

「股野君は、誰にも本心をうちあけない、孤独な秘密好きの性格でしたから、僕だけではない、誰にも深いことはわかっていないと思います。別に日記をつけるではなし、遺言状さえ書いていなかったのですからね」

「そう、そこが僕らの方でも、悩みの種ですよ。こういう場合に、本心をうちあけた友人がないということは、捜査には何よりも困るのです」

花田警部はそこで事件の話をうち切って、雑談にはいった。彼の話は実に面白くて、克彦もあけみも、事件のことなどすっかり忘れて、興にのったほどである。警部も克彦も、ウィスキーのグラスを重ね、だんだん酔が廻るにつれて、猥談も出るという調子で、あけみも映画人だから、少々の猥談に辟易するたちでもなく、三人とも心から、春のように笑い興じたものである。

花田警部は、その日、三時間以上もなが居をして帰って行ったが、それからというものは、三日に一度、五日に一度、訪ねてくるようになった。

真犯人と警視庁の名探偵とが、親しい友達としてつき合うというのは、克彦のような性格にとって、こよなき魅力であった。花田警部の来訪が度かさなるにつれて、彼らのあいだにはほんとうの親しみが生じて来た。