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すだま
木魂
夢野 久作
線上閱讀夢野 久作《木魂(すだま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,668 字 · 46 頁
彼はそのまま右手をソット額に当てた。その掌で近眼鏡の上を蔽うて、何事かを祈るように、頭をガックリとうなだれた。
彼は、彼自身がタッタ今、鉄道踏切の中央に立佇まっていたホントの理由を、ヤット思い出したのであった。そうして彼を無意識のうちに踏切板の中央へ釘付けにしていた、或る「不吉な予感」を今一度ハッキリと感じたのであった。
彼は今朝眼を醒まして、あたたかい夜具の中から、冷めたい空気の中へ頭を突き出すと同時に、二日酔らしいタマラナイ頭の痛みを感じながら起き上ったのであったが、又、それと同時に、その頭の片隅で……俺はきょうこそ間違いなく汽車に轢き殺されるのだぞ……といったようなハッキリした、気味の悪い予感を感じながら、冷たい筧の水でシミジミと顔を洗ったのであった。それから大急ぎで湯を湧かして、昨夜の残りの冷飯を掻込んで、これも昨夜のままの泥靴をそのまま穿いて、アルミの弁当箱を詰めた黒い鞄を抱え直し抱え直し、落葉まじりの霜の廃道を、この踏切板の上まで辿って来たのであったが、そこで真白い霜に包まれた踏切板の上に、自分の重たい泥靴がベタリと落ちた音を耳にすると、その一刹那に今一度、そうした不吉な、ハッキリした予感と、その予感に脅やかされつつある彼の全生涯とを、非常な急速度で頭の中に廻転させたのであった。