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いなかがえり
林芙美子随筆集
林 芙美子
線上閱讀林 芙美子《林芙美子随筆集(いなかがえり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 頁
と云う実に素晴らしい小説を書いた。文壇と云うものに孤独であり、遅筆で病身なので、この『第七官界彷徨』が素晴らしいものでありながら、地味に終ってしまった、年配もかなりな方なので一方の損かも知れないが、この『第七官界彷徨』と云う作品には、どのような女流作家も及びもつかない巧者なものがあった。私は落合川に架したみなかばしと云うのを渡って、私や尾崎さんの住んでいた小区へ来ると、この地味な作家を憶い出すのだ。いい作品と云うものは一度読めば恋よりも憶い出が苦しい。
私の家の出口には、中井ダンスホールと云うのがある。まだ一度も行った事はないが、なかなかさかっているのだろう。門を這入ると足のすれあっている音や、レコードが鳴っている。――私の家はかなり広いので、(セットの貧弱なのが心残りなのだが)、あんまり漠然としているので、そうそう旅をしなくなった。あっちの片隅、こっちの片隅と自分の机をうつして行くのだが、こんな大きな家で案外安住の書斎がない。時に台所の台の上で書いたり、茶の間で書いたりして旅へ出たような気でいたりした。
ここの家からは中井の駅が三分位になり、吉屋さんの家が近くなった。