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いなかがえり

林芙美子随筆集

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《林芙美子随筆集(いなかがえり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 頁

青空文庫

変らず飯屋の払いに困っている。

家の前は道をはさんで線路になっている。その線路はどの辺まで伸びて行っているのか、こんなに長くいて沼袋までしか行った事がないので知らない。朝々窓から覗いていると、近郊ピクニックの小学生たちの白い帽子が、電車の窓いっぱいに覗いて走って行く。夕方になると疲れたようなピクニック帰りが、また、いっぱい電車に群れて都会の方へ帰って行った。

私の仲のいい友達が、中井の駅をまるで露西亜の小駅のようだと云ったが、雨の日や、お天気のいい夕方などは、低い線路添いの木柵に凭れて、上落合や下落合の神さんたちや奥さんたちが、誰かを迎いに出ている。駅の前は広々としていて、白い自働電話があり、自働電話の前には、前大詩人の奥さんであったひとがワゴンと云う小さなカフェーを開いている。

自働電話に添って下へ降りると落合川だ。嵐の日などは、よくここが切れて、遠まわりしなければ帰れなかったのだが、この川を半分防岸工事をして、小鳥屋だの西洋洗濯屋だの麻雀荘と、もう次々に出来てしまって、この頃は夜々駅の横に植木市がたった。この植木市には時々見覚えの合歓の若木などが売りに出ている事がある。