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いなかがえり

林芙美子随筆集

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《林芙美子随筆集(いなかがえり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 頁

青空文庫

男の作家たちに拮抗してゆこうなどとはつゆ思わないけれども、せめて、もう一段背のびをしてみたいと思っている。――室生さんのこの頃のお仕事の逞しいのに愕いている。武田さんも随分あぶらがのっている。偉いと思う。みんな歴史を持っている人たちだけれども、よく疲れられないものと、その苦しみを考えるのだ。私は纔かに七、八年の歴史しか持っていない。それも、自ら踊りを踊る仕事で、苦味いことだらけだ。

清水のように特殊な味のない仕事をするのはこれからだと自ら反省している。

私には、深く行き交う友達がない。私はほとんど人を尋ねて行ったことがない。町でたれかれに逢うだけのもので、人の家を訪問することはまれだ。自分に倚り添うてくれるものは、結局自分自身なのであろう。――散歩も段々おっくうになってしまった。ひまがあるとベッドに横たわって呆んやりしている。月のうち五、六ぺん、神田の古本屋、本郷の古本屋をひやかして歩く。とても愉しい散歩のひとつだ。割合、不勉強で本代はいまのところそんなにかからない。拾円もあれば我まんしている。昔は、随分飢えたような生活だったので、少しばかり楽になると、私は手におえない浪費者で、何でも買ってみたくて、なりあがり者の気質を多分にそなえているのだ。