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ますおとし

枡落し

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《枡落し(ますおとし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,765 字 · 67 頁

青空文庫

「ああ、きっとだ」

おみきは二人を見て頬笑んだ。この二人なら仕合せにやってゆけるだろう、おうめは苦労の味を知っているし、芳っさんは慥かな人だ。生みの母親からも愛されず、小さいじぶんから蜆をとり、それを売りあるいた経験もある。そしてなによりも、おうめを愛しているということが大切だ。あたしとあの人のあいだには、――よくはわからないけれど、――およそ愛情というものを感じたことがなかった。そこがあたしのいけないところだったかもしれない、あたしが女として、あの人を男として愛することができたら、あの人も悪くぐれることはなかったのではないか。あの人の悪いところの半分以上は、あたしの責任かもしれない、とおみきは思った。

「いろいろお世話になりました」とおみきはおじぎをし、おうめに云った、「おまえそこまで送っていっておあげ」

「よかったわ、ほんとによかった」あるきながらおうめは芳造をながし眼に見た、「みんなあなたのおかげよ、芳っさん」

「その芳っさんだけはよしてくれねえかな」

「あらどうして」

「どうしてってこともねえが、なんとなく子供っぽいようでな、ずいぶんなげえこと云われてきたもんだから」