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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 148,519 字 · 296 頁

青空文庫

「七十郎は泊っているのか」

――十日ほどまえから滞在しております。

「どんな話しがあった」

――伊東がこのような放言を致しました、ここに書いてまいりましたが。

「あとで読もう」

――速筆のままですから、御判読がむずかしいと思います。

「あとで読む、ほかにはないか」

――ございません、伊東の放言には誰も相手になりませんでした。もちろんあの方も同じことで、伊東がなにを申してもとりあわず、まったく知らぬ顔でございました。

「あれは賢い人間だ」

――ただ一つ、伊東の話しによりますと、数日まえに新吉原へまいり、山本屋へあがったということですが。

「それは知っている」

――あの方は人にさそわれたと云っておりました。

「おれが命じたのだ、おれが命じてつれてゆかせたのだが、彼はついに尻尾を出さなかった」

――それだけでございます。

「畑の子供たちと宮本の弟はどうしている」

――宮本新八は里見どのがひきとり、畑の姉弟は塩沢丹三郎の家におります。

「動かしたら知らせろ」

――そのつもりです。

「裏をかかれるな、彼は賢いぞ」

――そのつもりでいます。

「くみのことは聞いている」

――湯島に家があります。