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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《樅ノ木は残った(もみノきはのこった)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 148,519 字 · 296 頁

青空文庫

「申したか」

――申されました。

「なんと云った」

――主君のためによきことならば、自分は独りぬきんでても申上げる、相談のうえなどという迂遠な誓言はできない。

「思ったとおりだ」

――はあ。

「次になんと云った」

――また、向後十年間は相互に堪忍せよとあるが、これも堪忍ならぬ意趣があれば堪忍はならぬ、と申されました。

「そうか、堪忍ならぬ意趣があれば堪忍はせぬ、とな」

――はっきり云われました。

「思ったとおりだ」

――はあ。

「大学はおれの思ったとおりに増長する、このあいだ評定役の会議があった、そのとき、遠山勘解由ひとりが異をとなえた」

――遠山と申しますと。

「大学の弟だ」

――さようでございますか。

「勘解由を評定役にしたのはおれだ、おれが大学にそうするよう暗示をかけた。大学はとびついた、弟を評定役にすることが、自分の地盤を固めると思ったのだ、そうして、まず弟に手柄をたてさせようとした」

――すると、異をとなえましたのは。

「大学のさしがねだ」

――仙台からですか。

「仙台から指図をしたのだ、おれは大学がなにか始めるだろうと思っていた、焚木をくべて、火のおこるのを待っていたのだ」