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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
線上閱讀橘 外男《橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇(いきふどう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 198,400 字 · 387 頁
しかもその座敷には、主人の左近将監と竜胆寺の若さまが、たしかに碁をうっていられるはずなのに、話声ひとつきこえるでもなければ、石の音がするでもなく、寒けのするようなしずけさは、どういうわけでしょう。気持のわるいこと、ひととおりではありません。
ふすまに手をかけながら、思わず佐平治のすくんだのも、むりはないでしょう。ややあって、
「ごめんくださりませ、だんな」
と、スーッとふすまをひらいて、ひと目座敷のなかを見わたしたとたん、おもわず、
「ヒャァ!」
と、この若党は、尻餅をついてしまいました。
「だ……だ……だんなさま! これは……これは……」
とばかり、口がきけぬのもどうり! このむごたらしさは、いったいなんといったらよろしいでしょう。長押といわず、欄間といわず、血は天井にまでとびちって、座敷のなかいちめんを、紅に染めています。
その血の海のなかに、女のような白足袋の足を佐平治のほうへなげだして、しっかと刀の柄をにぎったまま白蝋のような横顔をのぞかせて、あのうつくしい若さまはうつぶせになって、こと切れているではありませんか。しかも左近将監は、いったんの怒りもさめはてたのか、この血の海のまわりで、足ずりしつつ、