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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
線上閱讀橘 外男《橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇(いきふどう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 198,400 字 · 387 頁
だいいち、じぶんの身に思いあたるなんの落度もないのに、いくら癇癖もちだからとて、そうそう左近将監が斬ったりハッたりしようはずもないことです。
しかも、それをおしえにきてくれた佐平治が、かんじんの本人につたえないで、藤にだけつたえたということも、考えてみれば妙なことですし……そしてとりわけふしぎきわまることは、はじめにもいったように、玄関さきで話してきたばかりの藤が、八重よりさきにどうして納戸の中にはいっていたかということなのでしたが、気のどうてんしている八重には、もうそこまで物事を考えるおちつきを、まったくうしないきっていたのです。
そして藤にワッワとせかしたてられるままに、魂も身にそわず、ふるえながら八重は、そのまま夕闇にまぎれて左近将監の邸を逃げだしていました。
そして逃げだしていった八重のうしろすがたを見送りながら、ニヤリとすごい笑みをもらして藤がすがたを消すと、こんどはいれかわりに拭き掃除をすませたほんものの藤が、
「まあ、お八重さんたらどこへいったんでしょうねえ……もうじきだんなさまがおかえりになるというのにねえ」
と、ひとりごとをいいながら、間ごと間ごとをさがしまわっていたということを、いま必死になって村のほうへとお小姓街道を逃げている八重は、神ならぬ身の、露いささかもしるはずはなかったであろ