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いきふどう

橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇

橘 外男

線上閱讀橘 外男《橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇(いきふどう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 198,400 字 · 387 頁

青空文庫

真夜中にご主人さまのお話を立ちぎきするのは、重々よくないこととはぞんじましたが、だれもお客さまのいらっしゃる時刻でもないのに、ハテふしぎな! と思いましたものですから、襖のかげにしばらくたたずんでおりました。たしかに中から二、三人のヒソヒソ声がもれてまいります。

戸じまりをしてわたくしどもがやすみましたのは、たしかに四つ亥の刻すぎでございましたでしょう。ハテ、お客さまたちはどこからはいっていらしたのか? とふしぎに思いましたものですから、そーっと細目に襖をあけて、中をのぞいてみましたところ、まっくろな装束をつけたこわい男のかたがおふたりまでも……」

「なんと? 黒装束の男とな?」

「ハイ、まっくろな装束をつけたおかたがふたり、ご隠居さまをかこんで……しかもご隠居さまはあんどんのかげで片肌おぬぎになって、疵の療治をなさっていらっしゃるのでございます」

「疵の療治を?」

「左の肩からお乳の上へかけて、見るもむごたらしい刀傷を! たしかに刀傷でございます。

ご隠居さまはよほどおいたみなのでございましょう。顔をしかめてウウム……ウウムとうなっておいでになりましたが、ひとりの黒装束が、そのお疵へ何か煉りぐすりのようなものをぬって、もうひとりの黒装束は、さらし布でその疵をおつつみしようとしているのでございます。