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はるはばしゃにのって

機械・春は馬車に乗って

横光 利一

線上閱讀横光 利一《機械・春は馬車に乗って(はるはばしゃにのって)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 77,492 字 · 156 頁

青空文庫

どこまでも秘密から秘密へと落ち込んで消えていく筋合のものであった。しかし、領主をいまだに殿様と呼び、その前では平伏叩頭(こうとう)する習慣を維持している士族一派を、市民たちは御家禄(ごかろく)派と呼び特殊階級として許していることは明らかな事実であった。この御家禄派の現在の生活費は、その一党からなる地方第一の倉庫の所有権から上って来ていた。倉庫は平野の大産物である米穀の保管が目的であって、保管倉庫の完備と人心の素朴さでこの地の米穀は全国第一の実質を備えていた。

しかし、ここに新しい別の倉庫が建ち起って来た。それは農民を主体とする産業組合の活動である。この組合は農民の手でなる米穀類の保管から売捌(うりさば)き交渉一切を引き受ける上に、金銭を貸し与えて肥料の供給までするのである。この便利な組織は自然に農民の心を引きよせるに充分であった。ところが、ここに困ったのは、その敵である御家禄派の衰微ではなく市の主要群団であるところの商人たちであった。農民たちの金銭がすべて産業組合の手中に落ちた結果は、市の商人の品物の売れなくなるのは当然である。たちまち商人の破産するものが続出して来た。