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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 頁

青空文庫

飯島である。次郎は思わず苦笑した。何かむかむかするものが、胸の底からこみあげて来るような気持ちだった。しかし、かれはしいて自分をおちつけ、

「そうですね。」

と、なま返事をして眼をそらした。そして、そのまま、すぐそこを去り、塾長室のほうに行った。

塾長室の掃除は、朝倉先生夫妻が、空林庵の掃除をすましたあと、給仕の河瀬に手つだってもらって、自分たちの手でやることになっていたが、次郎も、都合がつきさえすれば、手つだうことにしていたのである。

中にはいって見ると、もう掃除はすっかりすんでおり、河瀬がストーヴに火を入れているところだった。夫人は炊事場のほうにでも行ったらしく、朝倉先生だけが、まだあたたまらないストーヴのそばの椅子にかけて、手帳に何か書き入れていた。

「どんなふうだね。」

先生は、次郎の顔を見ると、手帳をひらいたまま、たずねた。

「はあ――」

と、次郎は笑いながら、

「例によって、指導者がいるようですね。」

「飯島なんかも、そうだろう。」

「ええ、とくべつ露骨なようです。」

「田川はどうだい。」

「ちょっとその気があるようですが、軍隊式ですから、飯島とは質がちがいます。