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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 頁
小関氏ただ一人をのぞいては、満場笑いと拍手の渦だった。とりわけ朝倉先生と大河無門の拳闘でもやるようなぎこちない手ぶりが爆笑の種だった。中には朝倉夫人のしなやかな手振りに最初から最後までうっとりと見ほれているものもあった。
つぎは個人のかくし芸だったが、その皮切りにも、大河無門が立ちあがって例の蝉の鳴き声をやり、大喝采だった。それにこたえて、興国塾がわからも、その代表である黒田勇が出て詩吟をやった。満面朱を注いでの熱演は大河の蝉の鳴き声とは全く対蹠的だったが、節まわしはさすがに堂に入ったもので、これも大喝采だった。
そのあと次郎は、もう進行係としてほとんど世話をやく必要がなかった。すべては笑いと感嘆と拍手の中にすぎた。そして、最後に相互の代表からなごやかなあいさつを述べて解散することになったが、もしわかれぎわになって興国塾の塾生たちがきちんと玄関前に整列し、号令のもとに挙手注目の礼をおくらなかったとしたら、双方の塾生たちの間に、しつけの大きなひらきがあるのを認めることは、困難だったかもしれなかったのである。もっとも、そうであればあるほど、小関氏にとって、この数時間がにがにがしい時間であったことは言うまでもない。