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ぶそうせるしがい

武装せる市街

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《武装せる市街(ぶそうせるしがい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,959 字 · 234 頁

青空文庫

苦るしまぎれに、両手でむちゃくちゃに空気を引ッかいた。

これは、内地で、早足行進に、どうしてもすねが伸びない初年兵が、教官にボロクソにこづきまわされて、古いお城の松の枝で頸を吊って死んだ、その晩にうなされたのと同じ現象だった。その時にも、中隊全部が、息の根をとめられた。唸った。そして同時に眼がさめた。何と説明していゝか分からない。

「これは、何か不吉なことが起っているぞ。」

「俺れゃ、自分がしめ殺されたと思うた。……つらくッて、どうしても息が出来なかった。」

「誰れかゞ、現に、やられている! 無理、無法にやられている!」

正気づくと、彼等は云った。

「高取はいるか? 高取! 高取はいるか? どうも、俺れには、高取が、誰れかと一緒に眼のさきへやって来たような気がしてならん!」

柿本が、まだ、幻影を見ているような顔をして云った。

冷やッと、身が深い底へ引きずりこまれる感じがした。

翌朝、高取と、那須と、岡本と、松下、玉田が帰っていないことが分った。誰れしも、不思議がりながら、口に出しては、何も云わなかった。眼と眼でものを云った。木谷と柿本が、病院の負傷者と屍室の屍体をしらべた。