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ぶそうせるしがい
武装せる市街
黒島 伝治
線上閱讀黒島 伝治《武装せる市街(ぶそうせるしがい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,959 字 · 234 頁
自身の山にあったものだと云い出した。
その松は、皮をむかれ、削られて建ったばかりの門の背骨のような附木となっていた。
親爺は樹泥棒だった。庄屋は、その樹を戻せと云い出した。だが、その樹を戻すには、折角建った門を、屋根瓦を引っぺがし、塗った壁を叩き落し、組立てた材木をばらばらにしてしまわなければならなかった。――所持林の境界線を間違えた――ごま化したことは、すっかり親爺の信用を落してしまった。
彼は買収のきく村の人間に愛想をつかした。そして、村の人間は、樹泥棒であり、誣告人である彼に、頭から見切りをつけた。
八月の末のある晩、親爺は、幹太郎と妹を残して村を出た。路ばたの草叢では蟋蟀が鳴き始めていた。家の前の柿の古樹の垂れさがった枝には、渋柿が、青いまゝに、大変大きくなっていた。その下の闇を通ると、実がコツ/\と頭を打った。
親爺は、村のはずれの船橋を渡ると馬車に乗った。馭者の両脇の曇ったガラスの中のローソクは、ゆら/\とゆれていた。
「さよなら! さよなら!」
幹太郎は長いこと寝つかれなかった。
――あれから親爺の転落が始まったのだ。あんなことさえなかったら、俺等だって、支那へなんか来てやしないのだ! 彼はやはり、いつかは内地へ帰ってしまいたい希望を捨てなかった。