輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

はぐるま

歯車

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《歯車(はぐるま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,267 字 · 52 頁

青空文庫

が、それだけに悪徳の話は愈僕を憂鬱にした。僕は一時的清教徒になり、それ等の女を嘲り出した。

「S子さんの唇を見給え。あれは何人もの接吻の為に……」

僕はふと口を噤み、鏡の中に彼の後ろ姿を見つめた。彼は丁度耳の下に黄いろい膏薬を貼りつけていた。

「何人もの接吻の為に?」

「そんな人のように思いますがね」

彼は微笑して頷いていた。僕は彼の内心では僕の秘密を知る為に絶えず僕を注意しているのを感じた。けれどもやはり僕等の話は女のことを離れなかった。僕は彼を憎むよりも僕自身の気の弱いのを恥じ、愈憂鬱にならずにはいられなかった。

やっと彼の帰った後、僕はベッドの上に転がったまま、「暗夜行路」を読みはじめた。主人公の精神的闘争は一々僕には痛切だった。僕はこの主人公に比べると、どのくらい僕の阿呆だったかを感じ、いつか涙を流していた。同時に又涙は僕の気もちにいつか平和を与えていた。が、それも長いことではなかった。僕の右の目はもう一度半透明の歯車を感じ出した。歯車はやはりまわりながら、次第に数を殖やして行った。僕は頭痛のはじまることを恐れ、枕もとに本を置いたまま、○・八グラムのヴェロナアルを嚥み、とにかくぐっすり眠ることにした。