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しのふちより

死の淵より

高見 順

線上閱讀高見 順《死の淵より(しのふちより)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,084 字 · 38 頁

青空文庫

おれの誕生を思わせる

祝福されない誕生を

喜ばれない

迎えられない

私生子の

ひっそりとした誕生

死ぬときも

ひとしくひっそりと

この世を去ろう

妻ひとりに静かにみとられて

だがしーんとしたそのとき

海が岸に身を打ちつけて

くだける波で

おれの死を悲しんでくれるだろう

おれは荒磯の生れなのだ

おれが生れた冬の朝

黒い日本海ははげしく荒れていたのだ

怒濤に雪が横なぐりに吹きつけていたのだ

おれが死ぬときもきっと

どどんどどんととどろく波音が

おれの誕生のときと同じように

おれの枕もとを訪れてくれるのだ

※(ローマ数字3、1-13-23)

自宅に帰ってからの詩である。はじめはベッドに寝たきりだったが、だんだん庭に出たり近くを散歩するようになった。気持や考えもすこしずつまた変ってきた。一方、心境の明暗の度合いのはげしくなったところもあり、自己から離れた詩の書ける時もあった。

安東次男は詩は老年の文学であると書いていた。私にとって詩は正に老年の文学である。私の詩の実際は、安東次男の言う老年の文学とは違うかもしれぬが、詩が青春の文学だけでないのは、私のためにも詩のためにも仕合わせである。