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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《死までを語る(しまでをかたる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 頁

青空文庫

母が、私の幼時の唯一の話として、いつでも聞かせたのに――この鹿やんが、住吉神社へ詣って、土で彩色を施した馬を買ってきてくれた。私は、幼少時代、玩具という物を持った覚えがないが、母も、この馬は嬉しかったらしい。それを私は、持ち上げると共に

「四王天、馬とって抛った」

と、叫んで、土間へ投出したのだそうである。土の馬故、粉々で、鹿やんは

「ああ」

と、云ったまま、ひどく悄気たというが、この事は、幼稚園以前であるから、私の大衆文学智識というものは、相当に古くから、その淵源をもっている。

これを裏書するもう一つの事実は、東京の新粉細工、大阪団子細工、あれの細工しないで、板へ並べただけのものが、――今も、何んというか知らぬが――欲しくて仕方がないが、名がわからない。いろいろと考えて

「義経の八艘飛びおくれ」

と、団子屋に云った。

「八艘飛びあれへん」

と、素気なく云われて、幼稚園で、友達の中へも入れぬ臆病な私が、大道の真中で、何んなに立ちすくんだか、それから、暫く、団子は買わなかった。

この、四王天や、八艘飛びは、鹿やんが教えてくれたものらしい。私の為に、絵本や、立版子を買ってきてくれたのは、ことごとくこの人であるから、何一つ、その話していてくれた事も思出せないが、父も、母も、そんな事は、全く知らぬのであるから、私の今日