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ししゃのけんり
死者の権利
浜尾 四郎
線上閱讀浜尾 四郎《死者の権利(ししゃのけんり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,854 字 · 61 頁
いや、それが常ではないのでしょうか。
前の場合は、まだしもいいのです。この場合正しき者は法の不公平を叫び得ます。自分の正しきことを主張し得ます。仮令、終局には敗るるとも、なお且つ相手の不正を指摘することが出来るはずです。
後の場合は、如何でしょうか。正しかった者、言い換えれば生きている間正しかった者、即ち最早死んでいて口の無い者は、如何したらよろしいのでしょう。彼(もしくは彼女)を苦しめ虐んだ不正者には、法律の許す範囲において自己を防禦する術があります。然し死人に口はありません。死者は何と罵られても、はずかしめられても一言の弁解する術さえ持ち合せておりません。死者は鞭うたれても当然黙していなければならないのです。しかもその侮辱が、そのはずかしめが、その罵言が、合法的である場合に、死屍は墳墓を打ち破って躍り上りたいほどに憤怒しようとも一言も自己を弁護することは出来ないのです。これは判り切った話です。けれど、判り切ったこの話は果して正しいでしょうか。この状態はこれでいいのでしょうか。
死屍はいくら罵られても仕方がないのでしょうか。
「死んだ者はもはや救う法はない、たとい彼(もしくは彼女)を殺した者であってもやはり人間だ、せめてその犯人の生命でも救ってやりたい」