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せっしょうだにのおにび

殺生谷の鬼火

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《殺生谷の鬼火(せっしょうだにのおにび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,545 字 · 19 頁

青空文庫

凶報到る

凶報到る

東京理科大学生の椙原敦夫は、北海道の奥地に在る故郷の妹から、

(母死ス父危篤至急帰レ、至急ヲ要ス)

という意味の電報を受取った。

「なんだい是は」

敦夫は訳が分らぬという顔で呟いた。

「母さんが死んで父さんが危篤だって? ――またチイ公の悪戯じゃないのか」

春の休暇で帰省した時には父親こそ数年来の病床にあったが、妹の千代子も母親も揃ってぴんぴんしていたし、他に何も変った事が起りそうな状態は見当らなかった。

「然しまさか母死すなんて事が冗談に云えるもんじゃない、殊に依ると何か変事でも起ったのかも知れない、――兎に角行ってみよう」

敦夫は直ぐ出立の支度をした。

至急という事なので、朝の旅客機で旭川まで飛び、そこから青沼線の軽便鉄道に乗込んだのが、七月はじめの雨催いの午後一時であった。故郷の椙原村は旭川から東北へ三十里ほど入った僻地で、まるで馬車に毛の生えたような軽便鉄道が一本通っているきり、全く文明から掛離れた山間に在った。

駅へ着いたのが午後七時過ぎ、電灯が無くて石油ランプの吊ってある、凡そ時代ばなれのした駅の建物を出ると、――横手のところに爺やの平造が馬車で迎えに来ていた。