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ひとうとうこうき

比島投降記

石川 欣一

線上閱讀石川 欣一《比島投降記(ひとうとうこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,333 字 · 134 頁

青空文庫

と飛び出して来たのが彼である。ゴンサカ行の噂を聞いていたのであろう。ゴンサカ行に際して、こちらはもちろん文字通り寸鉄をだに帯びていない。ゲリラからも、また友軍からも、襲撃される危険は十分あったのである。「イシ! イシ! よく帰って来た!」と、ハッピイは僕を抱かんばかりにした。日本の兵隊さんは不思議そうに見ている。米兵は二人のまわりに集まって来た。ハッピイはうれしそうに「これがイシだ」といい、何と思ってか「イシキーだ」と繰返した。それまでに会ったことのない若い兵隊が「お前、英語を話すか」と僕に聞いた。間髪を容れず「お前より英語がうまいぞ」とハッピイがいったので、大笑いになった。

国に帰ったら手紙をよこしなといって、アドレスを僕の手帳に書いた兵隊もあるが、ハッピイはそんなことはしていない。ハッピイというのはもちろんニックネームで、僕は彼の本名さえ知らないのである。特徴のある顔でもなし、今後万一どこかで出喰わすことがあっても、お互にレコグナイズ〔認識〕するかどうかは疑問である。それにしても何故ハッピイは僕がゴンサカから無事に帰ったことをあんなによろこんだのだろう? 恐らくハッピイとしては、僕でなくとも、誰であろうと、危険な場所から無事で帰れば、心からよろこんだのであろう。