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ひょうがきのかいじん
氷河期の怪人
海野 十三
線上閱讀海野 十三《氷河期の怪人(ひょうがきのかいじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,321 字 · 15 頁
こたえたのは、木谷博士だった。博士は、部厚い本のページを開いて、しきりに読みつづけている。前の席の背中が、小さいたなになっていて、そのうえにフラスコがおいてある。フラスコの口から、かすかに湯気がたちのぼっているが、この中にはあつい紅茶が入っているのであった。
「写真で見た北極の氷原とは、だいぶんちがったけしきですね」
「それは、ちがうよ。北極の氷原は、こんなにでこぼこしていない。もっとも氷山はあるが、山脈の感じとはちがうよ。おおあそこに最高峰のエベレストの頭が見えるな」
「どれです。エベレストは……」
「ほら、あそこだ。あそこに灰色がかった雲があるが、あの雲から頭を出している」
と、いった博士は、どうしたのか、そこでまゆをひそめて、窓ガラスのところへ、ひたいをすりつけ、
「……あの雲は、いやな雲だなあ。ほう、風が出てきたらしい。雲がうずまいて、うごきだしたぞ」
と、しんぱいそうである。
「先生、すると、空はあれますか」
「うむ、一あれ、きそうだ。大吹雪がやってくるぞ。おお、機はいよいよ高度をあげだしたぞ」
そばに、高度計がかかっていたが、その指針は、生きもののように、ぐるぐるうごきだした。