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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁
もうこの上は理屈をいっても仕方がない。外記はとうとう大菱屋の二階を堰かれてしまった。
この場合に外記のために働く者は中間の角助のほかはなかった。彼は主人の内意を受けて、仲の町の茶屋へ行ってうまく口説いた。そうして、外記から綾衣に宛てた手紙を届けてくれと頼んだ。頼まれた茶屋では迷惑したが、断わるにもことわり切れないで、ともかくも其の手紙をそっと綾衣に取次いだ。綾衣からも返事があった。
今夜の雨を幸いに、外記はおはぐろ溝の外に待っていた。宵の口の混雑にまぎれて、綾衣は櫺子窓を破って屋根伝いに抜け出した。外記は用意して来た蓑笠に二人の姿を忍ばせて、女を曳いて日本堤を北へ、箕輪の里に一旦の隠れ家を求めに来たのであった。
この話を聴いて、お時は困った事ができたと吐胸をついた。困ったとは思いながらも、今さら殿様を責める気にもなれなかった。綾衣を憎む気にもなれなかった。かえって何だか惨らしいような気にもなって、二人を列べて見ている彼女の眼がおのずとうるんで来た。
五百石の殿様と吉原の花魁がこの雨の中を徒跣足で落ちて来るとは、よくよく思い合っていればこそで、ただひと口に無分別のふしだらのと悪くばかり言う訳にもいくまい。