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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁
二人の身になって見たらば、又どんなに悲しい切ない事情が絡んでいるかも知れない。お家も勿論大切ではあるが、こうまで思い詰めている若い二人を無理に引き裂くのは、小雀の眼に針を刺すという世の諺よりも、猶更むごい痛々しい仕方ではあるまいか。
困ったことではあるが、もう仕方がない。無理もない。後はともあれ、差しあたってはお世話するよりほかはあるまいと、お時も迷わずに思案を決めた。
「よろしゅうござります。綾衣さまは確かにお預かり申しました。しかし殿様はお屋敷へお帰り下さりませ。お判りになりましたか」
「むむ。おれまでが厄介になろうとは思わない。女だけをなにぶん頼むぞ」
「かしこまりました」
外の雨は颯としぶいて、古い雨戸はがたがたと揺れた。
「湿れて来たせいか寒くなった。もう少し炉をくべてくれ」と、外記は肩をすくめて言った。
「ほんに気がつかずに居りました。お二人ともそのぬれた召し物ではお冷えなさりましょう。まずお召し替えをなされませ」
お時は戸棚の古葛籠の底を探したが、小柄の十吉の着物では間に合いそうもないので、彼女は二枚の女物を引き出した。縞の銘仙の一枚は、外記が五つの袴着の祝儀の時にお屋敷から新しくこしらえて頂いたのを、物持ちのいい彼女は丹念に保存して置いたのである。