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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁

青空文庫

「花ちゃんは悪い人よ」

こう言ったお若は、豊吉と眼を見あわせて急に口をつぐんだ。

林之助は面白くなかった。これには何か深い意味が忍んでいるらしく思われた。しかしこの上に根問いしても、どうで正直のことは白状しまいと思ったので、彼はいい加減に話を切りあげて起った。

外へ出ると雨はまだびしょびしょと降っていた。林之助は傘をかついで往来にぼんやり突っ立っていた。病気と聞いたらばなおさら急いでお絹を見舞うべきであるのに、彼はなんだか足が向かなかった。今の話の様子では、お花の取持ちで或る客と向島へ行ったらしい。しかもそれが普通の客ではないらしく思われてならなかった。自分のところへ押し掛けて来たのはその帰り途に相違ない。当てつけらしく自分をからかいに来たのか、それとも後悔してあやまりに来たのか。いずれにしても、林之助はいい心持ちでその話を聞くことは出来なかった。

「しかし折角ここまで来たもんだ。行ってみよう」

林之助はまっすぐに本所へ行った。傘をかたむけて狭い路地へはいると、路地のかどの店にはもう焼芋のけむりが流れていた。お絹の家は昼でも表の戸が閉めてあったが、叩くとお君がすぐに出て来た。