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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁
なんぼ相手が承知の上でも、それではあんまり傾城冥利に尽きるであろうと彼女も思った。もうひとつには、店出しをしたばかりでまだ一人の馴染みもないお染のために、ああいう頼もしそうな客を見付けてやりたいとも思ったので、お雪は快く承知した。
客は振り切って帰ろうとするのを、お雪は引き止めた。客扱いに馴れている手だれの彼女は、強情な男を、無理無体に引き戻して、お染が閨の客にしてしまった。
その晩は夜半から冷たい雨がしとしとと降り出して来た。お染は自分の客が菊地半九郎という侍で、新しい三代将軍の供をしてこのごろ上洛したものであることを初めて知った。お花の客が坂田市之助という男であることも、半九郎の口から正直に言い聞かされた。
お染も自分の身の上を男に打明けた。自分は六条に住んでいる与兵衛という米屋の娘で、商売の手違いから父母はことし十五の妹娘を連れて、裏家へ逼塞するようになり下がった。それが因果で自分は二百両という金の代にここへ売られて来たのである。ゆうべは初めての店出しでお前さまに逢った。今夜も逢った。そうして、ほんとうの客になって貰った。しかし勤めの身は悲しいもので、あすはどういう客に逢おうも知れないと、彼女は枕紙を濡らして話した。