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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁
これがふだんの時であったら、彼も自分の宿に眠って安らかに今夜一夜を過すことが出来たかも知れないが、祇園の酒も今夜かぎりだと思うと、半九郎はとても落ち着いていられなかった。
彼は雨を冒して祇園へ引っ返して行った。そうして、運命の導くままに自分の生命を投げ出してしまったのであった。
花菱の座敷には市之助がまだ浮かれ騒いでいた。よくも遊び疲れないものだと感心しながら、半九郎も再びそのまどいに入った。
「半九郎、また来たか。おれはさすがにもう堪まらぬ。お身が代って女子どもの相手をしてくれ。頼む、頼む」
今度は市之助がお花の膝を借りて横になってしまった。半九郎は入れかわってまた飲んだ。寡言の彼も今夜は無器用な冗談などを時どきに言って、女どもに笑われた。
「あの、お客様が……」
お雪が取次ぐひまもなしに、一人の若侍が足音あらくこの席へ踏み込んで来た。
「兄上、兄上」
それが弟の源三郎であると知って、市之助は薄く眼をあいた。
「おお、源三郎か。何しにまいった」
「言わずとも知れたこと。お迎いにまいりました」
「出発の荷作りならよいように頼むぞ」
「わたくしには出来ませぬ」
同じ迎いでも、これはさっきの若党とは一つにならなかった。