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さばくのびき
沙漠の美姫
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《沙漠の美姫(さばくのびき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,658 字 · 14 頁
四
「こういう生活を俺は愛する」
昼間の空は濁っていたが、夜の空は澄んでいた。十字星が星座にクッキリと座って、幾億年の昔から、幾億年の将来に亙って、自然と人生の悲喜の相を、涙を以て見下ろしているよ――といってでもいるように、眼瞼をしばたたきしばたたいていた。
「人の神経をナーバスにして、人の心を萎縮させて、その生活を憂鬱にさせる。その癖焦燥におとし入れる。これが都会の文明だ。そういう文明もよいだろう。よくても悪くても仕方がないともいえる。個人の理想や情緒などには、それこそ一瞥もくれないで、社会というものは社会自体に、そっちへ向かっていくのだから。そういう状態を泳ぎ切られる人は、そこからよい物を掴み出して、そうしてそれを自分に食わせて適するように肥やして行く。俺もまんざらの不適任者ではない。時々よい物を掴み出して、自分へ食わせて肥やして行く。が、しかし、俺は少し疲れた。反対の物がほしくなった。複雑なコクテイルの酒よりも、単純な真水がほしくなった。沙漠の生活はさながら真水だ」
四
呼韓邪単于の領国ともいうべき白狼河の沼沢地へ帰陣したのは、それから間もなくのことであった。