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あぶらじごく

油地獄

斎藤 緑雨

線上閱讀斎藤 緑雨《油地獄(あぶらじごく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 34,624 字 · 69 頁

青空文庫

時、加賀屋横丁を曲った両人連れの女ひとりが、どうやら小歌に紛れがないようで、急いで自分もそこを曲ると、その女達は立花屋という寄席へ這入った。いつか小歌が落語が面白いと云ったことをおもい出して、必定それと自分もうか/\寄席へ這入り、坐を定めかねて立って居た今の両人の前へ廻って見ると、似ても似つかぬ三十近い薄痘痕、後から見ると頭髪ばかりが若いので、貞之進はいよ/\落胆して、すぐに出るも変なものとちょっと坐りは坐ったが、高座で何事を云うか耳には這入ない、他の笑ったのに誘われて顔を挙げると、ちょうどその時起って手水に行った女の、しょい揚の赤いのに疑念がかゝって、小歌ではあるまいかと用も無い椽境いの紙障をあけて、こちらへ這入ろうとするその女に衝当り、厭な人だよと云われてその顔を見れば、なるほど年ごろは十七八眼附もどこか似たようでも、小歌にそんな黒子はないと、誰かの罪でゝもあるように寄席を飛出し、又もや彼の路次をわざ/\通りぬけて、本意なく秋元へ帰ったが、それからは毎夜々々、そんなことに本郷から柳橋まで出て来て、話しにならぬ苦労に窶れて居たが、遂に小歌の影法師にも出逢わなかった。