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ほうえつクラブ

法悦クラブ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《法悦クラブ(ほうえつクラブ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,176 字 · 28 頁

青空文庫

禁断の光

内気な許婚同士のように、真っ暗な中で手を握り合ったまま、頬と頬を触れて、半分は黙りこくって、あとの半分はおしゃべりをして。

やがて木立の外からエンジンの音がして、自動車のヘッド・ライトが、サット窓をかすめると、婦人は手早く帽子を冠ってヴェールを頤まで下げてしまいました。

「さア、迎が来ました、又来月の今日、渋谷駅の八公の銅像の前で――逢引の場所は通俗な方が人目に立たなくて宜いでしょう、ウ、フ」

そう言い乍ら、私の手を引いて、隠れ家の玄関へ出たのでした。自動車のヘッド・ライトが、闇の中に女の全身を浮出させました。

汝こそは、我が安らい――

シューベルトの恋の歌が、婦人の口から、極めて自然に流れ出たのです。初夏の木立に消え入る余韻の美しさ、歌の技巧はまさに素人ですが、天稟の美声はそれをカヴァして、涙させるような感銘を与えずには措きません。

話す声の美しさも抜群でしたが、歌う声の美しさは、又違った趣のあるものでした。大指揮者ニキシを参らせたという、十七歳のエレナ・ゲルハルトは、どうかしたら斯んな魅惑的な声を持って居たかも知れません。

禁断の光

「それから私は毎月一度ずつ、六ヶ月に六回続けて、其婦人に逢いました、渋谷の八公の銅像前から、自動車に乗せられて、砧の――曾ては風致区域に指定された、美しい木立の中の隠れ家へ