輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

はたのてい

波多野邸

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《波多野邸(はたのてい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,194 字 · 45 頁

青空文庫

出て行きたまえ。」

彼は左手を伸ばして、山口の上衣の襟を掴んでいた。そして右手を腰の後ろにやっていた。その右手に、瀬戸の重い灰皿を握りしめていた。私はその手首を捉えた。灰皿はすぐ彼の手を離れて私の手に移った。その時には、山口はもう数歩押しやられていた。そして山口はちょっとよろめき、表へ出て行った。

洋介は元の席へ戻ってきたが、眉をしかめて黙っていた。大田が出て来て、殆んど無表情の顔で言った。

「ビール一本、損しちゃいましたよ。」

洋介も殆んど無表情で言った。

「あいつ、探偵気取りでいやがる。」

それだけのことであった。然し、そのことは、洋介の隠れた一面を私達に啓示してくれたのである。

その時のことを、もう洋介は忘れてしまったかのように、ぼんやり微笑んでいた。

高石老人は詮索しなかった。

「それでは喧嘩にもならん。だが、君もあまり飲んでばかりいないで、研究所の方にも身を入れるんだな。」

彼に反して、研究所の事務員として真剣に働きたいと言っている者があるのを、高石老人は打ち明けた。――魚住千枝子のことだった。今迄はただ、室の掃除や図書の整頓だけをしていたが、今後は、ほんとの事務員として働きたい。