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じんだいしのけんきゅうほう

津田左右吉歴史論集

津田 左右吉

線上閱讀津田 左右吉《津田左右吉歴史論集(じんだいしのけんきゅうほう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 117,964 字 · 229 頁

青空文庫

歴史の矛盾性

歴史の領域は過去にある。これは何人にも異論のないことであろう。しかし、過去は過去として初から固定しているものではなく、断えず未来に向って推移してゆく現在の一線を越えることによって、未来が断えず過去に化し去るのである。これもまた明白なことである。ただ歴史の取扱う過去は、単なる時間としての過去ではなくして、過去となった人の生活である。ところが、生活は未来に向って進んでゆくのがその本質である。断えず未来を領略してゆき、未来に向って自己を開展してゆくのが生活である。だから、歴史は未来に向って進んでゆくものを過去としてながめねばならぬ。未来に向って進んでゆく生活が過去となった時、いいかえると生活が生活でなくなった時、はじめてそれが歴史の領域に入るのである。けれども、歴史の取扱うものは生活でなければならぬ。だから、そこに矛盾がある。問題はこの矛盾から生ずる。

歴史の第一の任務は、過去の生活を生活として叙述し描写することであると、余は考える。生活は刹那の間も静止することのない不断の動きであり進展であるから、生活を生活として叙述し描写するということは、その動きその進展の過程を過程として叙述し描写するということである。