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じんだいしのけんきゅうほう
津田左右吉歴史論集
津田 左右吉
線上閱讀津田 左右吉《津田左右吉歴史論集(じんだいしのけんきゅうほう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 117,964 字 · 229 頁
何故にかく二種の社会、二種の人物が出来るかというに、これには勿論種々なる事情があるに相違ない。色々な理由があるに相違ないがしかし私は今それを論じようとするのではない。これが歴史上に何う働くかを考えて見たいのであります。
私は先日来徳川時代の書物を読んでおりますが、其処には右二ツのタイプがあって、学者や詩人にもこの二方面が見えるようであります。先ず学者に就ていって見るに、徳川時代の社会は組織制度にのみ偏った時代でありました。文化頃でありましたか、日本に来たオランダ人が長崎より江戸に旅行せる紀行文を書いておりますが、その中に、もし百年前の日本人が今生れ変って来るならば自分らのかつて生活したりし時代と現代とが、少しの変化もなく全く同一なのを見て定めて驚愕の声を発するであろうと書いてあるが、如何にもその通りであってこの時代の特色は平和と固定であったのであります。然もそれに慣れたる日本人は世に変化あり、社会に変動あるを想像することが出来なかった。今日の人々は社会の変化にのみ心付き、世の中の固定ということは何うしても考えられない。然るに当時の人は全く之に反しておったのでありますから、徳川時代の思想家、学者、指導者らは、要するに世の中は動かぬものである。