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〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき

津田左右吉歴史論集

津田 左右吉

線上閱讀津田 左右吉《津田左右吉歴史論集(〔『しなしそうとにほん』しょはん〕まえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 79,004 字 · 156 頁

青空文庫

それにもかかわらず、天皇は国民に対していつも親和のこころを抱いていられたので、何らかの場合にそれが具体的の形であらわれ、また国民、特にその教養あり知識あるものは、率直に皇室に対して親愛の情を披瀝する機会の得られることを望み、それを得た場合にそれを実現することを忘れなかった。「われらの摂政殿下」というような語の用いられた場合のあるのは、その一例である。そうして遠い昔からの長い歳月を経て歴史的に養われまた固められた伝統的思想を保持すると共に、世界の情勢に適応する用意と現代の国家の精神に調和する考えかたによって、皇室の永久性を一層明かにし一層固くすることに努力して来たのである。

ところが、最近に至って、いわゆる天皇制に関する論議が起ったので、それは皇室のこの永久性に対する疑惑が国民の一部に生じたことを示すもののように見える。これは、軍部及びそれに附随した官僚が、国民の皇室に対する敬愛の情と憲法上の規定とを利用し、また国史の曲解によってそれをうらづけ、そうすることによって、政治は天皇の親政であるべきことを主張し、もしくは現にそうであることを宣伝するのみならず、天皇は専制君主としての権威をもたれねばならぬとし、あるいは現にもっていられる如くいいなし、それによって、軍部の恣なしわざを天皇の命によったもののように見せかけよ