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いきにんぎょう

活人形

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《活人形(いきにんぎょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 頁

青空文庫

淑母死して七七日の忌も果てざるに、得三は忠実の仮面を脱ぎて、ようやく虎狼の本性を顕したり。入用る雑用を省くと唱え、八蔵といえる悪僕一人を留め置きて、その余の奴僕は尽く暇を取らせ、素性も知れざる一人の老婆を、飯炊として雇い入れつ。こは後より追々にし出ださんずる悪計の、人に知られんことを恐れしなりけり。昨日の栄華に引替えて娘は明暮不幸を喞ち、我も手酷く追使わるる、労苦を忍びて末々を楽み、たまたま下枝と媾曳してわずかに慰め合いつ、果は二人の中をもせきて、顔を見るさえ許さざれば垂籠めたる室の内に、下枝の泣く声聞く毎に我は腸を断つばかりなりし。

数うれば三年前、一日黄昏の暗紛れ、潜かに下枝に密会い、様子を聞けば得三は、四十を越したる年にも恥じず、下枝を捉えて妻にせん。我心に従えと強迫すれど、聞入れざるを憤り、日に日に手暴き折檻に、無慙や身内の皮は裂け、血に染みて、紫色に腫れたる痕も多かりけり。

下枝は我に取縋りて、得堪えぬ苦痛を訴えつつ、助けてよ、と歎くになむ。さらば財産も何かせむ。家邸も何かせむ、皆得三に投与えて、かかる悪魔の火宅を遁れ、片田舎にて気散じに住みたまう気は無きか、連れて遁げんと勧めしかど、否、先祖より伝わりたる財産は、国とも城ともいうべきもの、いかに君と添いたいとて、人手には渡されず。