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うみからきたつかい

海からきた使い

小川 未明

線上閱讀小川 未明《海からきた使い(うみからきたつかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 6,149 字 · 13 頁

青空文庫

あまりに、その音が悲しかったからです。故郷といえば、幾百千里遠いかわからないからです。そして、帰りたいと思っても、いまや、そのすべすらなく、まったく途もなかったからであります。少女は、どうかして、やさしい人の情けによって救われたいと思いました。

空は、時雨のきそうな模様でした。今朝がたから、街の中をさまよっていたのです。たまたまこの家の前にきて、思わず足を止めてしばらく聞きとれたのでした。

そのうちに、街には、燈火がつきました。家のうちのピアノの音はやんで、唄の声もしなくなりました。けれど、哀れな少女は、この家の前を去ろうとせずに、そこに立っていました。

そのとき、りっぱな洋装をしてお嬢さんが出てきました。お嬢さんはこれから、どこかへ出かけられるようすでした。

「お姉さん、わたしもいっしょにつれていってください。」と、門に立っている少女は、呼びかけました。

お嬢さんは、びっくりして振りかえると、そこにかわいらしい、しかし寒そうな、さびしそうなようすをして、少女が自分の顔を見上げていましたので、この子供は、どこの子だろうかと、くびをかしげたが、思い出せませんでした。