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うみにいくるひとびと
海に生くる人々
葉山 嘉樹
線上閱讀葉山 嘉樹《海に生くる人々(うみにいくるひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,305 字 · 321 頁
ことをいったものだ、それと同じく船のりたちも、陸には実際以上の憧憬を持った。彼らは、それが陸上でさえあればどんな幸福でもありうると、彼らが陸にいて苦しさのあまりかつては、海へ逃げ出したことさえも忘れて思うのであった。あの時分と今とは変わってるだろうと、またあの時分はおれがまずかったんだと。彼らは、夜の入港のように、陸の醜悪な事実を一切闇のおおうにまかせて、その明るい、港の魅惑的な燈火にあこがれてしまうのであった。そのくせ彼らは、どの上陸の際でも陸上の生活が、彼らと非常に縁遠いものだということを感じさされた。それはちょうど、陸上のすべての事物や人が、彼を突っ放すのだと感ぜずにはいられないのだった。
それは左ねじの電球が、右ねじのソケットにはまらないのと同じく、彼らを専門的にし、不具的にしたのだ。
万寿丸は一晩港外に仮泊しないでも済むように順序よく、進んだ。尻屋の燈台、金華山の燈台、釜石沖、犬吠沖、勝浦沖、観音崎、浦賀、と通って来た。そして今本牧沖を静かに左舷にながめて進んだ。
水夫たちはフォックスルにスタンバイしていた。雪もよいの風は鋭く頬を削った。