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うみにいくるひとびと

海に生くる人々

葉山 嘉樹

線上閱讀葉山 嘉樹《海に生くる人々(うみにいくるひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,305 字 · 321 頁

青空文庫

藤原は辛抱する気でこれもむやみに、煙草をふかした。

西沢の話が、その巧妙なる山にはいって、今まさに落ちようとする時、藤原がいった。

「君の話は大変うまい。そして大層おもしろい。ただ、一度だけ純粋なほんとの話をして聞かしてもらったら、なおおもしろいだろうと思うよ」

「アハハハハ、君の皮肉の方が上手だよ。僕も一度ほんとうな話をしたいと思うんだが、どれがほんとだか、どこからがこしらえたんだか、今では自分にもわからなくなってしまったんだ。ハハハハハ」と気のよさそうに笑った。

「君は全く、無産階級芸術家の宝玉だ。全くだよ」と藤原は、全くまじめにいった。

「小銃だと受けこたえができるが、藤原君がタンクを使用し始めると、僕も退却以外に応戦の法がねえや。ハッハハハハ」

西沢も、そのベッドへ上がって、ころがってしまった。

「どうだい、だれもかも皆寝ちゃったね。『寝るほど楽はなかりけり、浮世のばかが起きて働く』って歌があるじゃないか、皆賢くなっちゃったね」といいながら波田は、自分の巣から本を持ち出して来て、それを、罐詰の蓋のところへ行って読み始めた。

藤原はしばらく、暗い室の中で、煙草の火だけを、時々明るくさせては一人、何か考えているのであった。