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うみにいくるひとびと

海に生くる人々

葉山 嘉樹

線上閱讀葉山 嘉樹《海に生くる人々(うみにいくるひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 161,305 字 · 321 頁

青空文庫

そして、船首のハッチ二つは完全にその防備ができ上がった。

まだ二つのハッチが船尾の方に残っていた。そして、時間は今夕食に迫っていた。水夫たちは、飢えを感じた。けれども、海も飢えを感じて、わが万寿丸をのもうとしているのであった。

船は絶えずもがき、マストは絶えず悲鳴を上げ、リギンは絶えず恐怖に叫んだ。船首の船底は、波浪と決闘するように打ち合った。船尾ではプロペラーが、その手を空に振り上げた。

自然と人力とはその最大の力と、あらゆる知恵とをもって戦闘した。

三

船を一郭として、人間と機械とが完全に協力して、自然と戦っている時に、船員たちは、自分たちが、船のりであることを、この時以上に癪にさわり、心細くなり、哀れに気の滅入ることはなかった。そして彼らは、あらゆる瞬間の極度の緊張と、注意とにもかかわらず、自分の運命を哀れむのであった。彼らは、まっ暗な闇の中を電光が一時に、全く鮮明にパッと明るく照らすように、この困難な労働の間に、感ずるところの彼らの地位は、全くハッキリした賃銀労働者の正体であった。しかし、それは電光と全く同じであった。彼らは、すぐ、その仕事の方へと一切の注意を向けねばならなかった。