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しせい

消えた受賞作 直木賞編

富田 常雄

線上閱讀富田 常雄《消えた受賞作 直木賞編(しせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,806 字 · 36 頁

青空文庫

併し、今の勇はミチの肉体に誘惑を感じなかった。

「そうは体が持たねえよ」

「ふん、知らねえ人が聞きゃあ、ほんとだと思わあ」

「それより、おい、金になるものは何か無いのか」

「金になるのは十八歳の妾の体だけよ」

「こん畜生、逆う気か」

「ほんとの事じゃないか。酒買いや、煙草買いの鞘で妾達二人が米の飯に有り付こうというんだ。無理にきまってる処をあんたはそっくり博奕に持ってって、妾は昨日、姐御に百両借りて、やっと、コッペパンとおかずと手巻きのモクを買ったんだよ、逆さになったって鼻血も出ねえや」

「聞いた風なことを言うねえ、お前がちっとしっかりすりゃ、こうまで堕ちねえったってすんだんだ」

「だから、組が解散になった時、ダンサーになろうかって言ったら、男に尻を抱かせて踊るなあ嫌いだと言ったろ」

「当り前だ」

「女給はいけない、何はいけないと言い出したら、妾に商売の無いのはきまってるじゃないか」

ミチは煙草に火を点け、ひと口吸って男に渡した。

「くさくさするのは妾さ」

「へへ、元はお嬢様で居らっしゃる。かたぎで居りゃあ、お嫁に行ってという処か」

「又、言うんだね」

ミチはきつい眼になり、その白い頬を痙攣させ、構えもせずに牝豹を思わせる敏捷さで男に飛びつくと、その口に近い皮膚を力をこめて抓った。