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しんやのきゃく

深夜の客

大倉 燁子

線上閱讀大倉 燁子《深夜の客(しんやのきゃく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,926 字 · 28 頁

青空文庫

この夜更けに! と思い、窓を開けて外を眺めたが何も見えない、植込の闇は深く、ひっそりとしている。

彼女は窓を閉め、ストーヴの側に椅子をすすめたが、また微かな音を聞いた、と、思うと、今度は歯の浮くような響がした。

振り向いてみると、窓に人影が映っている、ハッとしている間に硝子を切り、窓のかけ金を外して、覆面の男がひらりと部屋の中へ入って来た。

洋子は起ち上り、ベルを押そうとすると男はその手を押えて、

「人をよばないで下さい。どうぞ騒がないで――私はお宅へ泥棒に来たのではありません。先生にお目にかかりたくって参ったのですから――」

「それなら、何故、玄関から案内を乞うておいでにならないのですか?」

「表玄関から――、上られる身ではございませんので――」

応接室の硝子窓を破って闖入するほどの兇漢にも似ず、その声は柔らかくいかにも優しい、しかもどうやら聞き覚えがあるようにさえ思われるのだった。

男はやがてテーブルの上に短刀を置いた。洋子はそれをちらりと横眼で見た。彼はポケットを探り、ダイヤ入の指輪と釘二三本とを同じくテーブルの上に載せて、無言でポケットをたたいて見せた。