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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

線上閱讀海野 十三《深夜の市長(しんやのしちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 頁

青空文庫

今夜の号外となにか関係があるのかしら。僕は胸を躍らせて、また夜の町へ飛びだした。時刻は正に午後九時。

門前仲町――とネオン・サインが出ている横丁、酸漿電灯の下をくぐり、そこにポツンポツンと三味を弾いて、これから商売にかかろうとする新内流しの二人連れに訊ねると、待合の紅高砂家はすぐ分った。ゴタゴタした植込みを抜けて、玄関の格子をガラガラと明けると、奥からバネ仕掛のように垢ぬけのした年増の女中がでてきたが、中腰になるより早く、

「……アノお気の毒さまでございますが、今夜はちょっと取込んで居りまして……」

と断られてしまった。それが癪の虫に響いたので、思わず「僕は検……」と云いかけて、わが声にハッと気がつき「金曜会の川田さんに取次いで呉れたまえ」

「ああカーさんの……オヤオヤ飛んでもない失礼を申上げて……まあ妾どうしましょう。穴があれば入りとうござんすワ……」

それで関所は無事通行を許された。

そこは十二畳位の大広間だった。紫檀の大卓子を囲んで、和服に羽織袴の立派なる人物が三人、いずれも年の頃は五十を過ぎている。しかしこのとき位、僕が愕いたことはない。総監は予期したことながら他の二人の人物は誰だったろうか。