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ひのとり

火の鳥

太宰 治

線上閱讀太宰 治《火の鳥(ひのとり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 37,740 字 · 76 頁

青空文庫

」

ちらと見ると、浅黄色のちりめんに、銀糸の芒が、雁の列のように刺繍されてある古めかしい半襟であった。

「晴れないかな。」そろそろポオズが、よみがえって来ていた。

「ええ。お草履じゃ、たいへんでしょう。」

「よし。のもう。」

その夜は、ふたり、帝国ホテルに泊った。朝、中年の給仕人が、そっと部屋へはいって来て、ぴくっと立ちどまり、それから、おだやかに微笑した。

乙彦も、微笑して、

「バスは、」

「ご随意に。」

風呂から出て、高野さちよは、健康な、小麦色の頬をしていた。乙彦は、どこかに電話をかけた。すぐ来い、という電話であった。

やがて、ドアが勢よくあき、花のように、ぱっと部屋を明るくするような笑顔をもって背広服着た青年が、あらわれた。

「乙やん、ばかだなあ。」さちよを見て、「こんちは。」

「あれは、」

「あ。持って来ました。」黒い箱を、うちポケットから出して、「みなのむと、死にますよ。」

「眠れないので、ね。」乙彦は、醜く笑った。

「もっと、いい薬も、あるんですけど。」

「きょうは、休め。」青年は、或る大学の医学部の研究室に、つとめていた。「遊ばないか。」

青年は、さちよと顔を見合せて、笑った。