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とうみょうのまき

灯明之巻

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《灯明之巻(とうみょうのまき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,444 字 · 47 頁

青空文庫

」

よし、ただ、南無とばかり称え申せ、ここにおわするは、除災、延命、求児の誓願、擁護愛愍の菩薩である。

「お爺さん、ああ、それに、生意気をいうようだけれど、これは素晴らしい名作です。私は知らないが、友達に大分出来る彫刻家があるので、門前の小僧だ。少し分る……それに、よっぽど時代が古い。」

「和尚に聞かして下っせえ、どないにか喜びますべい、もっとも前藩主が、石州からお守りしてござったとは聞いとりますがの。」

と及腰に覗いていた。

お蝋燭を、というと、爺が庫裡へ調達に急いだ――ここで濫に火あつかいをさせない注意はもっともな事である――

「たしかに宝物。」

憚り多いが、霊容の、今度は、作を見ようとして、御廚子に寄せた目に、ふと卯の花の白い奥に、ものを忍ばすようにして、供物をした、二つ折の懐紙を視た。備えたのはビスケットである。これはいささか稚気を帯びた。が、にれぜん河のほとり、菩提樹の蔭に、釈尊にはじめて捧げたものは何であろう。菩薩の壇にビスケットも、あるいは臘八の粥に増ろうも知れない。しかしこれを供えた白い手首は、野暮なレエスから出たらしい。勿論だ。意気なばかりが女でない。