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むざんやな

無惨やな

久生 十蘭

線上閱讀久生 十蘭《無惨やな(むざんやな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,601 字 · 16 頁

青空文庫

「急きたもうな。急いては話ができませぬ。家風をごぞんじないと言うたは、こういう次第……当家においては、二百石という加増は重いものになっている。二百石より上のご加増は下さらぬ家風でござる。又内、忠蔵めらに、どのような武功忠節があって、四百石、百五十石というご加増を下しおかれたか」

雅楽頭は、しどろもどろで、

「おのれは、藩祖さまが憑りうつったような高慢な口をきく。さっきから、ちくいち聞いていたが、おのれの申すことは、すべて理窟だ。つまりは、このわしに切腹せい、詰腹を切れというのかい」

蔵人は下眼になって含み笑いをしながら、

「腹を召されようとなら、ご遠慮なく召されい。蔵人、お供つかまつる」

と、切って放したようにいった。

詰合いの用人、小姓どもは、息をのんで控えていたが、そのうちに一人が立って、蔵人に、

「お次へ、お立ちなさい」

と言いかけたが、返事もしない。押しかえして催促すると、蔵人は光をためた金壺眼で用人の顔を仰ぎ見、重ねて言えば、抜討ちに討って捨てよう眼色であった。

用人は、これはと、一と足あとへ退ると、蔵人はとっさの間に立構えになり、雅楽頭に会釈をして、すらりとお次へ出る。